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少女小説書きのブログ。土曜更新中。
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『剣の乙女のフォックストロット』



 省エネモードが常態のせいか、
 「これが好き!」と胸を張って言えるものは案外と少なかったりします。
 が、日本の戦国時代と武将たちは、その数少ない例外です。
 (それでも、歴女、とはとても呼べないレベルですが……)
 そしてそれが、この話の狐の親子たちのルーツです。

 実は彼らの元となったのは、毛利親子と真田親子でした。
 知略の限りを尽くして家と領地を守る父。
 そうした父に協力しつつ、ときに反発する息子。
 そんな勝手なイメージから、
 ヴェンセクト、ノクト、アンセルトは生まれました。
 担当様ブログにあるとおり(汗)、
 本になった完成稿とまったく違う第1稿は、
 イメージになった武将たちの魅力にくらんで、
 狐の親子たちへ心が引っ張られてしまったせいだと思います……。

 プロット見直し→改稿、と急ピッチで進んだ中、
 やっとフィリイが動きはじめ、
 最初はもっと無気力キャラだったノクトも、
 いくらか気力を出してくれました。
 といっても フィリイは恋愛面には疎いですし、
 良識的で正義感が強い分、ノクトとの身分差に過敏でした。
 ノクトはノクトで、身分差という感覚もない代わり、
 家庭問題に気を取られて
 恋愛自体への関心もまったくありませんでしたので、
 こちらはまだまだ難航したわけですが(泣)。
 スローペースなふたりでしたが、
 なんとか1冊内でまとまってくれてよかったです……。

 見直しで最も割を食ったのは、またしても敵役。
 リールッツです。
 もっと前面に出てくる敵だったのですが、
 ヘルグの影にすっかり隠れてしまいました。
 7人の敵ならぬ8人の兄を持つ野心家王子は、
 キャラとしてはとても気に入っていたのです。
 ですが、どうしてもそこまで書き込めませんでした。
 ただ、これまた脳内では活躍していて、
 帰国後に兄たちとやりあい、再びエウス公国に手を出してきて、
 フィリイを妃に迎えようと企みます。
 これに公私ダブルの怒りで立ち向かうのはノクトですが、
 素直なようでひねくれて、
 ひねくれているようで素直、というキャラですので、
 フィリイがまた要らない混乱に陥るところまで
 イメージしていました(笑)。

 逆に、改稿で一挙に出番を増やしたのはヘルグ、
 そしてオルダーでした。
 ちなみにこちらの2人、
 最初のプロットでは影も形もありません(汗)。
 そこからさらに改稿を重ねる中で、
 彼らも少しずつ役割が変わりました。
 ヘルグの家にいた駿足侍女は、
 リールッツからヘルグに貸されたエージェント、
 という裏設定があります。
 さらにヘルグの愛人も兼ねているという裏設定もあったのですが、
 そこは少女小説ということでカットしました。
 逆にオルダーは、物語の都合とページ数の関係上、
 二章以降さっそくフィリイと再会するシーンがカットになりました。
 なお15歳の現段階では、
 ノクトは彼をライバルとも見なしていませんが、
 あせりながらもついに遅い成長期を迎えた3年後、
 オルダーは長身の青年になる予定です(笑)。

 またアンセルトも改稿で出番が増えました。
 打ち合わせ時は「兄の恋仇」という話もあったのですが、
 悪戯好きなブラコン弟、という面が強いです。
 フィリイを気に入っているのもたしかですが、
 ノクトの反応を見るのも同じくらいおもしろがっています。
 その一方で、
 いつ死んでもおかしくないほど病弱だったことから来る諦観と、
 密かに持っている公子としての責任感で、
 実は家族以外に執着する感情は割と少ない、
 クールな性格でもあります。
 とはいえ、父ヴェンセクトも兄ノクトも結構感情的な人間ですので、
 アンセルトも根っこのところは案外と、かもしれません。

  家にありし櫃に鍵さし蔵めてし恋の奴のつかみかかりて

 リールッツの姪にあたる王女と恋に落ちたりして、
 なんて妄想をしていました(笑)。
 悲恋となってしまうかもしれませんが。

 なんとなくおわかりかもしれませんが、
 書いていて一番楽しかったのがヴェンセクトです。
 ノクトの母親シシィナとの悲恋、
 そしてアンセルトの母親ルーシャとの関係は、
 もう少し煮詰めればそれぞれショートショートが書けそうなくらい、
 はっきりイメージしていました。
 (ちなみにシシィナはヴェンセクトより年上で、ルーシャは年下です)
 ですが、これまた嫌な奴だと担当様から指摘を受けてしまい、
 あれこれ悩んでいろいろ書き直しました。
 少しは人好きする中年男になっていればいいのですが……!
 現在はこんな感じですが、
 後年、孫が生まれたら、
 めちゃくちゃ甘いおじいちゃんになると思います(笑)。

 
 おつきあいいただいて、
 どうもありがとうございました<(_ _)>

『〈恋死に王〉と迷子の寵姫』



 以前の記事でも書きましたが、
 このお話のヒロインとヒーローの名前は
 日本語をもじってつけました。
 第4回ルルルカップのお題
 「恋の落とし穴」から考えたお話なので、
 ヒロインの名前「ミアナ」は、
 「史実を『見』ていたら『穴』に落ちたキャラだから」
 というしょうもない発想から来ています(汗)。

 またヒーローの名前「サグェン」は、
 「過去の人間と思わせて実は現代まで生きていた
  『詐欺』みたいなキャラだから」
 サギ→サグィ→サグェンと変化させました。

 どちらもかなり適当な命名なのですが(笑)。
 書いてみたらしっくり来たので、
 そのまま採用になりました。

 元の短編を長編にするにあたっては、
 創作仲間さんにお題として出してもらった
 「みんなを笑わせようとするヒロイン」として
 ミアナを書き直しました。
 その結果なぜか
 「ヒーローに笑われるヒロイン」に
 なってしまったわけですが……。
 サグェンの笑い上戸もここからです。
 長い年月を生きて、
 人生に倦むという段階すら超えてしまったら、
 小さなことも積極的に楽しもうとするのではないか、
 と自分の中でスムーズにつながりました。

 また担当様からも助言をたくさんいただきました。
 例えば、冒頭の四方の王のシーン。
 これは担当様のアドバイスがあったからこそ
 書けたシーンです。
 これで聖なる色を「赤」とする
 ウールス王国のイメージが固まりました。
 (このためサグェンたちの装身具に「赤い石」があります)
 
 そしてこの過去のシーンから、
 「ウールスの昔の言葉には『?』を使わない」という
 自分の中のイメージもできました。
 ですのでサグェンと大ニィエの台詞には、
 「?」はないと思います。
 ……私がミスしていなければ、ですが(汗)。

 また、サグェンが不老不死であるという描写を
 ちょっとずつ入れてみました。
 上のとおり「?」を使わない言葉を
 老齢の大ニィエとサグェンだけが使っていること、
 すべてが豪華な身なりなのに、
 塔の上に飾り気のない古い弓を持っていたこと、
 (冒頭の四王の時代の持ち物という裏設定です)
 サグェンとたいして年の変わらないはずのニィエが
 幼いころにサグェンに抱きあげられていること、
 (子供と子供ではないので、それだけの体格差があります)
 傷の手当ての経験がずっとないこと、
 (手当てするだけでなく、手当てされる経験もありません)
 などなど。
 自己満足のささやかな手がかりではありますが、
 もし読み取っていただけていたらうれしいです。

 他にも、打ち合わせで新キャラ増加が決まりました。
 このときのメモを見ると、
   ・史官の女(おねーさん!)
   ・侍女
   ・ライバルの巫女←→副官と対立
 なんて書いてありますが、
 書き上げてみると、まっっったく違いました(汗)。

 副官ことサグェンの近臣コズアスは、
 短編での「馬糞」台詞の名無しキャラを
 ふくらませてふくらませてできあがりました。
 元の毒舌キャラを受け継いでいますが、
 サグェンとともに未来を生きる
 子孫を残してゆく立場でもあるため、
 妻との大恋愛設定が追加になりました。
 憎まれ口をたたき合っていた幼なじみの婚約が決まり、
 自分の感情を押し殺していたものの
 サグェンに焚きつけられ、
 馬を飛ばして幼なじみを取り戻してプロポーズ、
 という感じでしょうか。
 コズアスに対し上に立っていたサグェンですが、
 物語の後半では逆に彼に押されます。
 不変の者と変化してゆく者を
 表現できていればいいのですが。

 短編での単純な敵役ギネカは、
 長編では、両親に複雑な感情を抱くと同時に執着する
 ギルフィドとなりました。
 (ギネカのイメージは、使者団侍衛に移っています)
 限られた枚数では
 どうしても出番が少なくなってしまい、
 その分、少しでも印象的なシーンにできないかと、
 あれこれ悩んだキャラでもあります。

 そのギルフィドとからむことが多かった
 過去のシュゼ一族カゼルは、
 勝手に動き回ってくれるキャラでした。
 ミアナの口癖が「ひゃあ」で、
 カゼルが「うひゃあ」なのは、
 ちょっとしたお遊びということで(笑)。
 病弱で見かけも頼りなく子供っぽいながらも、
 心は物語中一番タフなイメージでした。
 ウールスに残ったあと、
 最初から結ばれないことを悟りながらもニィエと恋に落ち、
 なので意図的にウールスの巫女の記録を残さなかった、
 という裏設定があったりします。
 またミアナがウールス王国で字を書くシーンを入れたくて、
 イカ墨インクについて調べたりしていたのですが、
 カゼルがインクを渡すことで解決になりました。

 大ニィエとニィエは、
 メモの「おねーさん」「巫女」から出てきたキャラです。
 大ニィエに関しては『古今著聞集』が頭にありました。
 そうした人間の弱さを知っているがために、
 万が一にも醜態をさらさないよう、
 密かに恋していたサグェンに
 自分の最期を見せないという選択をしたキャラです。

 一方ニィエは若く、また直情的な性格なので、
 先のことなど考えずに、
 恋心で突っ走るキャラでした。
 けれども、サグェンが他者との間に設けていた壁を、
 ウールスの民であるニィエはついに超えられませんでした。
 その壁を超えたミアナに負けたと感じたことから、
 サグェンへの恋心が変化を遂げた成長キャラです。
 ミアナが消えたあと、
 雲の塔に引きこもったサグェンを説教したのは、
 カゼルとの恋が終わり、
 またひとつ成長した彼女だった、という
 裏設定があります。


 おつきあいいただきまして、
 どうもありがとうございました<(_ _)>

『バルベスタールの秘婚』



 19世紀ヨーロッパの写真集を見ていたら、
 こういう世界を一度書いてみたくなって、
 初チャレンジしてみました。
 船、トランク、鉄道、銀行、ガス灯、新聞……
 個人的な19世紀アイテムを思いきり詰め込みました。
 読みあさった『シャーロック・ホームズ』も思い出しつつ、
 あれこれ調べる時間も楽しかったです。

 あとがきに書きましたが、
 この話は旅行したイギリスの思い出にも
 多くを負っています。
 ローダが地図を見上げたモルドー大陸鉄道駅は、
 ロンドン某駅を念頭に置いて書きました。
 もちろん現実の駅とはいろいろ違いますが、
 半透明の天井から空の光が落ちて開放的な、
 ここまで来られた自分は、
 ここからまたどこにでも行けるのだという
 明るさに満ちた空間のイメージは、
 そのまま旅行のときのものです。
 そこから、常に前に進もうとする
 ローダの姿も浮かんできました。
 その他、旅先でいろいろ食べた思い出も、
 違う料理ではありますが随所にのぞいています(笑)。

 フェルウスは、
 「個人としてはあまり王子様らしくない王子様」
 としてイメージしました。 
 彼は「兄に遠慮する控えめな弟」です。
 裏設定というか改稿時に削った部分なのですが、
 フェルウスは兄の存命中から、
 その婚約者であるリザベーヌに惹かれており、
 しかしその恋を貫くよりも、
 胸の内に秘めつづけることを選択しました。
 というわけで、フェルウスは、
 「自分の心情」を隠すことが第二の天性になっています。
 ですがその一方で、隠さねばならなかった反動から、
 「自分らしさ」には強いこだわりを持ち、
 出していい「自分」は徹底的に出すキャラです。
 なので結婚する相手として、
 一方通行の恋しかできない妖精よりも、
 一緒におだやかな愛を育める人間を選んだ、
 という話になりました。
 が、ローダ視点で話を進めたこともあり、
 このあたりのフェルウスの感情をうまく書けなかったことが
 心残りです(泣)。

 心残りといえば、なんと言ってもルスカールです。
 フェルウス、クラードと過ごした陽気な大学生活の裏で
 密かに反王室思想に感化されていった彼の変容は、
 今回まったく書けずじまいでした。
 貴族である彼と劇場の貧乏な女優の卵との悲恋という
 裏設定があったりします。
 物語としてはこの1冊でおしまいですが、
 脳内では、このあと脱獄したり煽動したり逃亡したりと、
 いろいろ波瀾万丈でパワフルなキャラでした(笑)。
 最終的には、
 平民出身のローダがバルベスタール王太子妃、
 そして王妃となる意義を、
 フェルウスよりも理解するキャラです。

 クラードは、
 ああ見えて一番女性には積極的なキャラだったのですが、
 これまた今回時間切れで、
 お相手予定だったコノリーとそこまで行けませんでした。
 この話の数か月後、転職したコノリーと
 コーヒーハウスでデートしているシーンを
 想像していただければうれしいです。
 ただ、これからも生傷は絶えないことになりそうです(笑)。

 
 おつきあいいただいて、
 どうもありがとうございました<(_ _)>